ゲキ×シネ「蛮幽鬼」

演出:いのうえひでのり
脚本:中島かずき
http://www.geki-cine.jp/http://www.banyuki.com/

あらすじ(公式サイトより)
遠い昔。
ようやくひとつの政権で統治され始めた島国・鳳来(ほうらい)の国にまつわる物語。
無実の罪で監獄島に幽閉された《伊達土門》(だてのどもん)。
10年の歳月が流れてもなお、濡れ衣を着せた者たちへの復讐を生きる糧にしている。
監獄島の奥深くに捕らえられていた《サジと名乗る男》の力を得て脱獄、復讐への道を
着実に歩む土門の前に立ちはだかったのは、かつて将来を誓った女、《美古都》(みこと)だった――。

去年舞台の方も見に新橋演舞場まで行ったんですけどね、18:00開演だと思ってたら18:30開演で、しかも上演時間3時間ちょっとで間に休憩30分てことで、帰りの新幹線に間に合わない事が判明して*1、なんと終盤ギリギリのいいとこで途中でタクシーで帰ったんです…orz ストーリーは、前半を見ている時に「これって『モンテ・クリスト伯』だよな〜」と思って、やっぱりモチーフになってるってことは休憩時間の時にパンフレットを見て知ったので、まあストーリーの予想は着いたわけですが、やっぱりちゃんと最後まで見たいじゃないですか…。
そんな訳で、ゲキ×シネになったら絶対見る!と誓ってまして。一番近いところで仙台かな〜と思ってたら福島でも上映があることが分かったので、初日の初回に行って来ました!9:30に出るつもりが、起きたら9:00でびっくりしたけどね!!

観劇した時は、わたしは桟敷席だったから花道でのあれこれはほとんど見えなくて、もちろん表情もほとんど分からなかったので、アップで表情の演技まで見られたのがうれしかったです。キャスト別に感想!

友の無念を晴らすことに命を掛ける復讐の鬼
全く感情移入出来ない役なのですが、それも上川さんの上手さ故だと思います。だって普通は復讐だけが生きる糧の人なんて理解出来ないもの。そういう理解の範疇を出てしまって、でも狂気と美古都への愛情の狭間で揺れる様がとてもとても良かったです。見てる途中から、思考放棄すんな!ちゃんと考えろよ土門!とキーッとなりながら見てました(笑)てか、たとえ無実だと信じてはいても、10年も経ってれば他の人と結婚してても当たり前だろうよー(^_^;)そこを、お前も所詮金と権力かーってなるのは分からないなぁ。

土門への愛を秘めながら国を立て直そうとする妃
稲森さん美しい!本当に折れそうな細さで、それなのに国を背負わんとする姿が健気すぎる!「ひ弱な腕で…」と言うところで、稲森さんのほっそりした手首が袖から見えるのが映るんですが、もう本当にか弱そうで、そりゃあ刀衣も土門も大君も美古都様を守らねば!となってしまうよな〜と思いました。キャスティングが絶妙だなぁ。

美古都への忠誠心に生きる舞の名手であり剣の達人
殺陣が本当素晴らしくて!!劇場で見た時もだけど、今回も肌が粟立ちまくりでした。方白の時の舞いは、もう手足の少しの動きだけで鳥肌が立つし、刀衣の時の殺陣は剣舞みたいな軽やかさと美しさで目がどうしても行っちゃう。美古都をかばう最期のシーンには涙が出たよ…。美古都と刀衣の主従関係すごくツボです。

浮名の父である豪快な鳳来国の大連(おおむらじ)
いきなりコール&レスポンスのコーナーに、ゲキ×シネでも笑いが起こってました(笑)息子の事を思っている様子なんかから、憎めない悪党って感じで良かったです。

  • ペナン:高田聖子

命を救ってくれた土門を仲間たちと共に支えるハマン王朝の姫
ペナンも健気でねぇ…何度も土門を引き止めようとしているのに、それがもう眼中に入らない土門とのすれ違い感が切ない。

蛮教の大神官となった鳳来国の学問頭
道活と浮名は憎めないんだけど、空麿はちょっと…と思うのは、最後のアレがあるからだろうな(^_^;)でもあの浅ましさってリアルだよね。

勘は鋭いが女と欲に塗れた鳳来国の右大臣
道活の息子だけに、この人も小悪党(笑)あの奥さん(村木よし子)と結婚して、しかもなんだかんだで愛情もある様子な辺り、情には厚い人なんだろうね。京兼調部(川原正嗣)と土門のことも、良くは思っていないものの、別に自分でどうこうするつもりは無かったみたいだし。

  • 遊日蔵人(あすかのくらんど):山本 亨

自慢の剣で美古都を守る武人頭
正しいのが、この人と美古都だけなんだよな…これからも美古都を支えてあげて下さいと願ってしまうよ。

  • 京兼惜春(きょうがねせきしゅん):千葉哲也

美古都の父で道活と対立する鳳来国左大臣
大悪党ですね!こういう人もいないと政治が回らないのかもしれないけど、自分の息子と娘まで手にかけてまで得たいものなんだろうか?部下で惜春の密偵・丹色(山本カナコ)は惜春の愛人っぽい感じだったし、彼女も利用してたっぽいので、本当ひどいやつだ〜。

  • サジと名乗る男:堺 雅人

解放の引替えに土門の復讐への協力を誓った謎の殺し屋
編集のおかげで殺陣がうまく見えるなぁ(笑)あ、走り方はとてもかっこ良かったです!遠目だと微笑みに見えたけど、アップだと満面の笑みだったり舌出したりしてたのに驚いた!名前すら持たず、笑顔以外の表情も持たず、完全に人殺しの道具として生きるしか無かったのに、一族に裏切られたらそりゃあ全てを破滅させたくもなるんだろうけど、土門や刀衣みたいに繋ぎ止めてくれる人がいなかったんだと思うと悲しいね…。唯一土門がそういう存在になり得たんだろうけど、土門て視界が極端に狭くなっていて、周りなんて何も見えて無い状態だし。


あとは、鳳来国の大王(右近健一)がすっごいツボでした。賢くて優しくて、自分の立場も十分理解しているし、物事の本質を見抜く事が出来る故に殺されてしまうというのが切な過ぎる…もっと別の時代だったら良い王になれていただろうに…。サジとの、「だって君は強そうだもの」「強そうと言われたのは初めてです」「世間の人は見る目がが無いんだねぇ」「世間とはそういうものですよ」という会話で、また「世間」を理解したようだったのが切なかったー…。

11:05に始まって、14:30に終了(途中15分休憩有り)と長い作品でしたが、半端じゃなく密度の濃い作品で面白かったです!予告のあった「薔薇とサムライ」も、上映があるといいなぁ。福島フォーラムさん、よろしくお願いします!!

*1:劇団☆新感線だけに!